モル濃度mol/Lとファクターf
第4回目は【モル濃度mol/Lとファクターf】です。
まずモル濃度の定義を説明しましょう。
モル濃度mol/L
溶液1L中に何mol分の溶質が溶けているか
molは、分子の数をひとかたまりとして数えてる単位です。
分子6.02✕10^23個を1molとして扱います。
鉛筆12本分を1ダースと呼ぶのと同じことですね。
例えば2mol/L塩化ナトリウム溶液でれば、
NaCl溶液1L中にNaClが2mol分溶けています。
次にファクターfについて説明しましょう。
ファクターf
実際に溶液を作ったときの正確な濃度が、
目標とした濃度に対して何倍程度になっているか
を表すための倍率
例えば1mol/L塩酸(f=1.01)と表記されていたら、
1mo/L塩酸になるように調製したけれど、
正確には1mol/L✕1.01倍=1.01mol/Lです。
ということを表しています。
やはり人が作るので、
目標の濃度よりズレてしまいます。
そこで人が作った滴定液は標定※し、
正確な濃度をファクターを用いて表記する必要があるのです。
ファクターfは次のように求めます。
f=実際の濃度/目標の濃度
※標定とは
含量が保証された標準物質を使った滴定により、
正確な濃度を求めること
w/w%ではそこまでしなかったのに、
mol/Lではなぜファクターまで求める必要があるのでしょうか?
ここで、mol/Lを使う場面を考えてみましょう。
mol/Lは滴定による含量分析でよく使います。
「滴定による含量分析」について説明すると、
既知濃度の滴定液と未知濃度の試料を反応させ、
反応終了までに加えた滴定液の量から、サンプルの濃度を算出する。
という分析のことです。
例えば濃度がわからないNaOH溶液の場合、
既知濃度の塩酸で中和滴定をします。
このとき滴定液である塩酸の濃度が正確に分かっていなければ、NaOH溶液の濃度も正確に求められないことがわかりますか?
したがって滴定液に用いるものは、
正確に濃度が分かっていなければならないので、
mol/Lはファクターを用いて真の濃度を表記する必要があるのです。
いかがでしたか?
次回は濃度計算から一旦離れた話をします。
それでは!
w/w%からw/v%への変換
今回も単位換算の話をします。
第3回は【w/w%からw/v%への変換】です。
まずw/w%とw/v%の定義からおさらいしましょう。
w/w%
溶液100 g中に溶質が何 g溶けているか
w/v%
溶液100 mL中に溶質が何 g溶けているか
次にw/w%からw/v%へ変換する方法を考えましょう。まずw/w%からw/v%へ変換すると変わるものを確認します。
先に述べた各単位の定義から確認すると、
「溶液の単位がgからmLへ変化」していることがわかります。
ということは溶液の単位をgからmLへ変換すればいいはず。「溶液の密度g/mL(≒比重)」を使うと…
溶液g ÷ 溶液密度g/mL=溶液mL
となります。
したがって、w/w%は次のようにしてw/v%に変換出来ます。
w/w%=(溶質g/溶液g)✕100
であるので、
w/v%
={溶質g/(溶液g÷溶液密度g/ml)}✕100
={(溶質g/溶液g)✕100}✕溶液密度g/mL
=w/w%✕溶液密度g/mL
つまり
w/v%=w/w%✕溶液密度g/mL
となります。
逆に変換したければ
w/w%=w/v%÷溶液密度g/mL
また同様の考え方を用いて、v/v%への変換する際に応用すると次のようになる。
v/v%=w/v%✕溶質密度g/mL
v/v%=(w/w%✕溶液密度g/mL)✕溶質密度g/mL
そもそもこの単位変換ってどういう時に使うのでしょうか?最後に私の場合の使用例をひとつご紹介します。
−私の周辺での使用例−
粘度の高い試料を、w/v%単位で含量分析するとき。
通常w/v%単位であれば、試料採取は体積単位(mL)で行う。しかし粘度が高い試料の場合は、ホールピペットを使うと壁面にへばりつき上手く採取できない。
そこで試料を質量(g)で量り取って、w/w%単位で含量を求めてからw/v%に変換することに。
この他にも欲しい量だけの容量を持つガラス器具がない時に使ったりします。
今回は以上となります。
次回はモル濃度とファクターについてお話し、
溶液の濃度単位シリーズを一旦終えようと思います。
それでは!
w/w%とw/v%とv/v%
【w/w%とw/v%とv/v%】
(定義)
①w/w%
溶液100 g中に溶質が何 g溶けているか。
(例)5 w/w%塩化ナトリウム溶液
NaCl溶液100 g中に、NaClが5 g溶けている
②w/v%
溶液100 mL中に溶質が何 g溶けているか。
(例)3 w/v%しゅう酸溶液
しゅう酸溶液100 mL中に、しゅう酸が3 g溶けている
③v/v%
溶液100 mL中に溶質が何 mL溶けているか。
(例)80v/v%メタノール水溶液
MeOH水溶液100 mL中に、MeOHが3 mL溶けている
(ポイント)
・溶液=溶かして出来た液
溶質=溶かしたい物質
・単位のwとvのアルファベットの意味
w=重量のweight
v=体積のvolume
(使用例)
・これらを覚えておけば、必要な溶液の調製方法が考えられるようになる
(例1)20%水酸化ナトリウム溶液を100g作りたい時
20gのNaOHをビーカーに入れ、全体が100gになるように、純水を80g加える
(例2)5w/v%過マンガンカリウム溶液を100mL作りたい時
5gの過マンガンカリウムを100mLメスフラスコに量り取り、純水で全体で100mLになるようメスアップする。
溶液の濃度単位の使い分け
【溶液の濃度単位の使い分け】
溶液の濃度の単位といえば、%、mol/L、ppm…と色々ある。
しかし、用途によって使う濃度単位はある程度決まっている。
用途を理解して濃度単位を使い分け出来ると、溶液の作り方や、作る際にどう注意を払えばいいのかがわかる。
まず、溶液を用途別に分類してみる。
【用途別】
① 定量分析で用いるような溶液
(例)滴定液 (1mol/L塩酸など)
標準液 (Fe標準液1000ppmなど)
② それ以外の溶液
(例)分析中に添加する試薬など
(水酸化ナトリウム溶液300g/Lなど)
【特徴】
① 定量分析で用いるような溶液
その溶液によって、結果の数値がダイレクトに左右されるので、この溶液の濃度は正確でなければならない。
② それ以外の溶液
①ほど正確性を求められている訳ではない。
次に、これらの溶液の濃度を表すのによく使われる単位をまとめた。
【単位】
① 定量分析で用いるような溶液
mol/L、mg/L、ppm、ppb
② それ以外の溶液
w/w%(%)、w/v%、v/v%、g/L